今年9月に建て替えのために取り壊されたJR高徳線引田駅(香川県東かがわ市)の築96年の木造駅舎を描き残した男性がいる。地域の顔だった駅舎を忘れないでほしいと、来年3月に完成する新駅舎に作品を飾ってほしいと願っている。
地元の会社役員、鈴木史郎さん(75)。自動車部品の工場を開くため、1980年ごろに東京から移住した。市民グループ「風の港まちづくりネットワーク」のメンバーとしてまちおこしにも関わってきた。
高徳線開通と同じ1928(昭和3)年の建築だった木造駅舎には、思い入れがあった。「(約40年前)東京にいた米国人の妻に頼まれて引田駅の写真を送ったら、素朴な雰囲気が気に入り、来てくれた」。出張で寝台特急に乗って上京する際にも、よく利用した。
作品は縦53センチ、横90センチのアクリル水彩画。建て替え計画が浮上していた5月ごろ、ネットワークの活動でクリスマス向けに電飾された駅舎を描いた。「活動に取り組んだネットワークのメンバーから依頼され、思い出を残してあげたいと描きました」
新駅舎は市とJRが共同で建設中で、鉄骨造りになる。「木造駅舎がなくなったのは寂しいけど、時代の流れだから仕方ないかもしれないですね」と話している。(福家司)